お屋敷ブログ

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鳥かごのお姫様(8)

鳥かごのお姫様8(完結)

 
 
 「助けてー!」
 繭美が渾身の力を込めて空に呼びかけるも……。
「誰に言ってるっぺ? そっちは空だっぺ」
 笑われた。
「佐藤! あんたもなんとか…」
 佐藤は泣いていた。
「ちょーっ。泣いてる場合?」
「もう二度と、私の美しい顔が拝めないとなると…悲しすぎます」
 本気で佐藤は悲しいようだ。
「それは…私もちょっとは悲しいけど」
 ってそれとは今関係ないし!
 繭美は思い立った。そうだ。もう一かバチかであの薬を飲んでみよう。何かが変わるかもしれない。男達が繭美と佐藤をギロチン台に乗せるため縄をほどいた。その一瞬、繭美はポケットから瓶を取り出し、一気飲みをした!
「おぉ! 何やってる!」
 取り押さえるが、遅い。カラァンと小瓶が地面に落ちた――。
 遠くから歌声が聴こえる。澄んだ、蒼い、優美な、切ない声――。
 空を見上げると、鳥が飛んできた。一羽の、紺色の鳥。赤い尾。
「あぁぁ…あれは」
 民衆が騒ぎ出し、逃げ惑う。
「鳥の神様だー!」
「声を奪われるぞー」
 すっかり広場は無人と化してしまった。
 紺色の鳥は上空で人間の姿に形を変えた。蒼いドレスの若い女性。それはお菓子の家の魔法使いだった。
「あなた……が神だったの?」
 スーッと降り立つ魔法使いのお姉さん。
「そう見たいね」
 とパッパと埃を掃うお姉さん。そしてお姉さんはマイクを向けてきた。
「YOU、あなたに二択です」
 この人、ちょっと変…。
 お姉さんは続けた。
「その一、恋が叶い、愛する人とこの世界に留まりますか? それとも、元の世界に帰れる代わりに恋を失いますか?」
「――――」

 **

「ねぇねぇ。この後どうなるの?」
 と羽純が根羽に聞く。
「フフ……。それはまだ考えていません」
「どうなるのがハッピーエンドなの?」
 家来と何もかもを捨てて二人で逃げる。
 それとも、姫が城や自分の地位や、すべてを元通りにする変わり、家来との恋を終わらせる。
 羽純はどちらが幸せなのかわからなかった。
 根羽はニコリと笑って本を閉じた。
「それは姫が決めるんです。私が書くのはここまで」
「えー?」
「私は急がしいので。さて、佐藤さんはどこに消えたんでしょう?」

 **

「どちらかを決める?」
「ええ。そうよ。今決めてもらうわ」
 そんなこと言われても……。
 見ると、佐藤は目をハートにしていた。繭美の方にやって来る。
「セニョリータ。君を愛している」
「!?」
「もうこの男はあなたにぞっこんなの」
 くすっと魔法使いのお姉さんは笑った。
 私に、ぞっこん……?
 手を広げて繭美を抱きしめようとする佐藤。茶色に髪に高い鼻、整った小さな顔。中身も見た目も別人のようだ。私はずっと佐藤が自分に興味を持てばいいと思っていた。それが私の理想。でも、でも…。
 くるりと繭美はお姉さんの方を向いた。
「違う! こんなの佐藤じゃない!」
「…………」
「私はねぇ、もう一度佐藤に自分の顔を見せてあげたい。佐藤が愛してるのは私じゃなくて自分の顔よ! それが佐藤なの。わかる? この人は佐藤じゃない。佐藤を返してよ。こんなの恋が叶ったって言わない。だから元に戻して!」
 迷いなく言うと、お姉さんは大きな口をにたーっと広げた。
「もう一度自分の顔を見せてあげたい……か」
 お姉さんが魔法の杖を地面に付き立てる。そこから目のくらむような閃光が発せられる。
「……それが恋ってものなのかもね」
 お姉さんの声が、光に埋もれてやがて消えた。


 **

 ここは羽純の部屋。やっぱり羽純は、ちきゅうばくはつ、じんるいめつぼう、と書こうとして本を開けた。
 バン! とクラッカーを鳴らした規模の音がして、ビックリして羽純が本を投げ飛ばす。白い煙と供に、何かが落下する。
 ドサ!
「あ……れ?」
 繭美があたりをキョロキョロする。羽純は、突如現れた姉と佐藤にビビって、机の下に隠れた。
「ここどこぉ?」
「むにゃむにゃ」
 佐藤が繭美の下敷きとなって、倒れていた。
「さ、佐藤!」
「ここは、お屋敷……?」
「私達、帰って来れたのよ! やったわっ」
 佐藤は美しい元の顔になっていた。ボーっとしながら目をこする。
「むにゃー?」
 帰って来れたのね! また佐藤の顔が拝めるッ。神様アリガトウ。と繭美は思った。
 佐藤の顔こそ正義。この顔の男じゃないと恋しても意味ないの……。うん。
 女の子にとって、美形は正義だから(←おい)
 繭美はどさくさに紛れて佐藤に抱きついて、ついでに顔を両手で掴んで凝視しておいた。この目の大きくてコロンとした感じ。弓のような眉。長い睫毛。佐藤の顔バンザイ!!
「本当によかった……」
「あの世界って夢だったんでしょうか?」
「夢じゃないわよ! 私、神様に二択を迫られて…」
「二択?」
 羽純が机から出てくる。そしてそのへんに転がっていた本を拾った。
「お姉ちゃん……。この本に書いた二択を……選んだの?」
「羽純、その本ッ」
「えっと、なんて書いてあったっけぇ」
「羽純開いちゃだめぇ! 一生開くな」
「え?」
「開いたらびっくばんが起こるわよ」
 じんるいめつぼうより怖い発言だった。
 繭美の指示でしかめっ面の羽純。
「…………この本、どする?」
 と聞く。
「焼き払ってちょうだい」
「オッケー」
 と羽純が屋敷の焼却炉に直行する。
 本から一枚の青い羽が落ちたのに気が付かず……。


 おしまい



   

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