FC2ブログ

お屋敷ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit
   

執事で迷子(17)

執事で迷子15

 



 はっと佐藤は気がついた!
「あのキリン、なんかのキャラですよ! えっと…そうだ、たしかコンビニ!」
 ポンとぐーとぱーをくっ付ける佐藤。
「コンビニて何」
 首を捻る。
「だから! そんなことも知らないで生きてたんですかこんちくしょう」
 佐藤が毒づいたあたりで、二人は橋を渡りきった。
「あ……看板」
 佐藤が指を差す方向には、木製の看板で『ようこそ旅人さん』とかかれていた。
「街だ……ッ! 執事!」
 羽純が飛び出していた。小高い丘の上から下を見る。
 橋の下には街が広がっていた――。
 建物は白い石造りでヨーロッパ風。活気付いた街と言うよりは、ちょっと田舎でレモンでも作ってそうな(?)規模の街だった。パン屋、花屋、肉屋、と通りに店が続く。舗道のわきには木が植えられている。
 なんで、いきなりサバンナ→洪水→ジャングル→そして街!??
 羽純も佐藤もわけがわからなかったが、それよりも困ったことがあった。

「お腹すいた……」
 と羽純が下腹を押さえる。
「あー、やっぱり? 坊ちゃんやっぱり!?」
「うるさ」
「私もさっきから空いて空いてー」
 しかし。
 パン屋をのぞくと、普通に人がいた。顔はやっぱり洋風。たまにカバとか二足歩行で歩いていたり、ウサギとかがスーツで闊歩している以外は、この街は普通の街のようだ。
 いったいどうすれば、パンを恵んでもらえるのだろう。
「坊ちゃん。あのぉ……。お金なんか持ってないですよね」
「持ってるわけないじゃん! カバンとか全部流されたし!」
 タリタリラ~♪ タリタリ~♪ タリタリラリラリ!
 振り返ると、通りの広間、噴水の前でダンスする男女がいた。
 ジプシー…?? 長い布を体に巻きつけた服で、優雅に踊っている。男の方は踊りながら笛を吹いている。すると人が集まってきて、足元にコインを投げた。
 よく見ると、噴水の影には楽器があった。音楽一団らしい。男女の他に、男達が二、三人後ろに控えて出番を待っていた。
「これだ!」
 佐藤は何か決心したように、広間に進み出た。
「みなさーん! 今から異世界一の美貌、佐藤楽団がコンサートをします! お聞きください!」
「し、執事ッ」
 羽純が驚くも、佐藤は動じることなく踊りを中断させた。女が佐藤の美貌にびっくりしている。
「坊ちゃんも早く!」
「早くって……僕ヤダ」
「パンを食べるためです!」
 人々が広間に集まってきた。羽純は恥ずかしかったが、よく見ると皆、佐藤の顔が綺麗でそちらに注目していた。そんな状況にちょっとイラッとした。
 ……こんなにバカなのに顔だけは一流って…。
 自分達の見せ場を終了させられた音楽一団は、ぼーぜんと佐藤の行動を見ていた。なぜか止めることもなく。
 羽純は佐藤の横に立たされる。
「じゃあ、坊ちゃん! ピアノ弾いて下さい」
 音楽一団から強引に奪って、電子ピアノを羽純の前に置く。
「……電子ピアノ」
 なぜここにあるかはどうでもいいが…。
「坊ちゃん! 頼みますよ!」
 佐藤はタンバリン片手に、楽しそうに踊る振りをした。
「……っ」
 思い出した。そうだ。僕は、根羽と靴を買うんだった…。そしてピアノの発表会に出るはずだった。今少しだけ根羽が恋しい。
 目を閉じて、ホールでの演奏会を思い浮かべた。
 僕、今頃は……あそこでピアノを弾いていたんだ。
 別に発表会自体、どうでもいいんだけど……。ピアノ好きじゃないし。練習もいかにさぼるかばかり考えていた。
 でも、一生懸命教えてくれた先生とか、楽しみにしていたお母さんとか、根羽のために出たかった。
 羽純は発表会で弾くはずだった、トルコ行進曲を弾き始めた。根羽の笑顔を思い出しながら。
 ごめん。根羽。僕発表会出れなかった。やっぱりおつかいは無理だったみたい。
 すると、自然と拍手が湧き起こった。
 え? そんなに上手かったかなぁ?と思いながら顔を上げると、佐藤が曲に合わせてどじょうすくいっぽいダンスをして観衆を湧かせていた!
「!!!!」
 ――僕のピアノが汚れた。
 羽純は思わず弾くのをやめた。
「どうしたんですか坊ちゃん! ドンドン弾いてくださいよ!」
 すぐに猫ふんじゃったを弾く。
 佐藤はときおり「せい!」と掛け声を無理矢理ねじこんでくる。もうヤダ。
「ブラボー!」
 と観衆はコインを投げてくる。そして楽器を奪われた音楽一団も加わり、賑やかな音楽界が始まってしまった。

 **

「どうしたんですか。坊ちゃん」
「…………」
「何怒ってるんですか」
「……ふん」
 羽純と佐藤はコインをたくさんポケットに入れて持っていた。
「こんなに私のダンスのおかげでお金がたまったのに。感謝の言葉もなしですか」
 最終的にはお子様に見せられないダンスになったくせに…。
 キッと羽純は佐藤をにらむ。
「全部執事のせいだ!」
「何がですか」
「執事のせいで僕、こんなことになったんだ!」
「人のせいにしないで下さいよー」


 つづく


   

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。