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執事で迷子(17)

執事で迷子16

 



「執事って、なんで変なの?」
 と羽純は聞いた。
「変って、どこが変なんですか!? こんなに常識があって真面目で正義感のあるヒーロー執事なのに」
「どこが」
 羽純は、へっと笑って目を逸らす。すると佐藤が羽純の首を両手で掴んだ。
「……っ。坊ちゃんだってッ。変ですっ。コンビニも知らないで」
「知ってる。思い出した」
 テレビでコンビニが出ていた。そういや。でも入ったことないけど……。と羽純は思った。
「じゃあ坊ちゃん! 一人でパン買ってこれますか?」
「これるー!」
 悔しくて羽純が即答すると、佐藤がニヤリと笑ってコインを渡す。
「じゃあ、これでコッペパンを二つ」
「こっぺぱん?」
 やばい。知らないと佐藤に笑われる。
「わかった!」
「じゃあ私はこのベンチで待ってますからね?」
 羽純は一人でそう遠くないパン屋へ向かった。少しだけ心細かったが……。
 執事。意地悪。一緒に来てくれないなんて…。パン屋の前で羽純は泣きそうになっていた。
 おかしな世界にやって来て、しばらく一人ぼっちだったのだ。あの時、執事が本当に死んだと思っていた。すごく怖かった。だから、ホントは執事と一緒に行動したい。もう一人はいやだ。もしパンを買って佐藤がいなくなっていたらどうしよう。
 カラン。
 パン屋から出てきた動物を見て、羽純は心臓が止まりそうになった。
「おや」
「あっ……」
 紙袋にパンを入れ、はちきれそうなぐらいの荷物。それは――。
 モリゾーだった。
「おつかいかい? 偉いねぇ」
「森の…精霊」
 実際にいたんだ!?
 モリゾーはそのまま、スッといなくなった。
「そだ。パン買わないと」
 羽純は意を決してパン屋に入る。すると、パンがまったく無かった。店主のおじさんが、
「すまないねぇ。ちょうど売り切れなんだ」
 と言った。
「ど、どうしよう」
 グググーとお腹が限界を訴える。
「だったら、この通りを五百メートルぐらいいった先にコンビニがあるから、そこに行くといいよ」
 とおじさんが言った。
「――」
 え? コンビニがある?
 羽純がポケットを探ると、あのキリンからもらったカードがあった。
「おじさん、ありがとう!」
 羽純は一目散に佐藤のベンチへと帰った。
「執事! 大変!」
「ん? むにゃむにゃ」
 佐藤はベンチで眠っていたようだ。
「あのね! あっちにコンビニがあるって! 執事、あのキリンがコンビニでどうこうって言ってたじゃん! 僕、キリンからカードもらったし! キリンと会えるかも!」
「えー! それはすごい。早く行きましょう!」
 二人はすぐにコンビニ目がけて走り出した。
 しかし、再びトラブルが! 数人の男達に囲まれたのだ。ちょっと海賊っぽい格好の、若い三人組。
「お前達、さっきは派手に稼いでたじゃねーか」
「ちょっと俺達にも分けてくれよ?」
 小さなナイフを握り締める悪者。
「執事……」
 羽純は執事の影に隠れた。もう絶対絶命だ。
「坊ちゃん! 行って下さい。ここは私が」
「でも……」
「コンビニに行ってキリンさんに、元の世界に帰れるように頼んで下さい!」
 ドンッと背中を押される。悪者三人も佐藤の持っている金目当てなので、羽純の方には来なかった。
「執事!」
「行って下さい!」
 羽純はぎゅっとカードを握り締めた。そして、走り出す。後ろで「うぎゃあああ」と聞こえたが、走り続けた。
 執事! ごめん! 僕絶対コンビニにたどり着くから!
 走って、走って、走って、道の突き当たりに、目的の建物はあった。
 が!
「う、うそだ――」
 なんと道は三つに分かれていた。
 左から、サンクス、ローソン、セブンイレブン。もちろん羽純は各店の名前など知らない。
 
 ど、どれ!?
 
 いちいちどこが正解かを確かめている暇はない。あと数メートルで道が分かれる。まっすぐコンビニに飛び込んでキリンを呼び込まないと佐藤の命がない!
 うぅ…。僕がコンビニの存在なんか知らないせいで、こんなことに。僕、非常識な人間!? いや落ち着け。そうだ。僕はあの西園寺家の一員(?)こんなことぐらいでひるまないぞ! 僕が…僕が絶対佐藤を救うんだ!
 羽純はあることを思い出し、決意したようにまっすぐに一見のコンビニに入った。
 そしてパンを掴んでレジのお兄さんにこう叫んだ。

「ナナコチャージ!!!!」

 ピンポンパーン
 あたりが眩しくなったかと思うと、レジのお兄さんが奈那子に変わっていた。
「いらっしゃいませ~」
「奈那子!」
「よくわかりましたね」
 奈那子が笑う。
「だって……歌ってたから。~セブンセブン♪ って」
 そう。だから羽純は7のつく名前のコンビニに入ったのだ。
「記憶力のいい子だこと」
 奈那子は羽純のカードをくわえた。
「さてと、何かお困りで?」
「執事を助けて!」 
 奈那子はニコリと笑う。
「大丈夫……。あのイケメンさんなら。私が救ってあげるわ」
「よかったぁ…」
 崩れ落ちる羽純。もうヘトヘトだった。奈那子が羽純の元にやって来る。
「……私の故郷は、あなた達にはお気に召さない?」
「ここって…どういう世界?」
「ここは、人々が生み出したキャラクターが住む世界よ?」
「キャラクター!?」
「そう。今はキャラクター戦国時代でしょ? 毎年たくさんのゆるキャラ達が生み出されている。そのキャラクター達の本体の魂がここに住んでいるの。もしあっちの世界で仕事が無くなったら、ここで暮らすの」
「人間も住んでるのはなんで?」
「人間も、昔誰かに生み出されたキャラクターなのよ」
 じゃあ、あの街にいる人は全員、何かの意味があって生み出されたキャラクターなのか。
「中には人気がなくなって、自暴自棄になって酒をあおったり、盗みをしたり。キャラとしての生き方を忘れてる者もいるけど、まあほとんどが平和な街よ」
「どうして僕と佐藤はここに来ちゃったの?」
 奈那子は睫毛をパチパチした。
「……人間への復讐かしら?」
「えっ」
「死ぬほどこき使って働かせたあげく、人気がなくなったらポイ。私の友達のキャラも使い捨てされてね……。でも仕方ない。それが生み出された私達の運命だから。使い捨てキャラなのはわかる。でも、ちょっと悔しくて人間の車にぶつかってやったの。普通の人間は、私達「本体」の姿が見えないはずなのに、なぜかあの人とあなたは私が見えた。声も聞こえるみたい。だから…この街に連れて来たくなったのよ」
 ……そうだったんだ。
「奈那子はたくさん知られてるから、まだいいんじゃない? コンビニだし」
「そうね。でも今だけよ…。いつか新しい可愛いキャラが出来て、私は捨てられる」
「そんな……」
「十年も二十年も愛されるキャラクターなんて滅多にいないのよ」
 奈那子は切ない表情をした。
「だって…っ。からあげ君だってトリのキャラになっちゃったし!」
「……」
「がりがり君は契約延長したのにッ」
 ウルウルと泣きそうな奈那子。
 ちょっとよくわからない。
「ごめんなさい…。ちょっと先の見えない活動に精神がまいっちゃって」
「さっきモリゾーいたよ?」
「ああ。モリさんか。売れてるときはすごかったけど今は失速ぎみね」
「ここ、売れないキャラばっかの街なの?」
「いいえ。全員いるわよ。超売れっ子のトトロさんも来るし。今度サインもらっとく?」
「うん!」
 僕は嬉しくて奈那子の首に抱きついた。
「僕は、ずっと忘れないよ」
 と羽純が言った。
「え?」
「奈那子可愛い!」
「……嬉しいワ」
 あたりが光り始めた。
「うわ? 地面が光ってる…っ」
「もう行く時間ね…。楽しかったわ。お坊ちゃん」
「……奈那子。お別れなの?」
「ええ」
 


 つづく


   

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