お屋敷ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit
   

コスプレ大会事件簿

コスプレ大会事件簿8(完)

 


 
 こうなったらっ!

 佐藤は何も考えずに突進した――

「もう二位でいいや☆」
 すると、スージーが佐藤に気がついた。
「ふふ…私を殺して一位になるつもりですか」
「いいえ! 二位でいいです。リンゴさえもらえれば」
「おや。ずいぶんと適当になってしまいましたね……。坊ちゃんのためなんでしょう?」
「!」
 そうだ。坊ちゃんがフィギュアを待っている。そして今スージーを追い抜けば、優勝。
 ゴールゲートの向こうにテレビカメラと万里鈴達が待っていた。
「スージーさん、私と戦って下さい!」
「セバスそっくりと言ってもいいぐらいのあなたと一戦まじわれるなんて、光栄ですよ」
 スージーはデスサイズを持ち上げた。佐藤も手袋をはめなおす。
「男同士、本気で戦いましょう」
「――」
 スージーの表情が固まった。
「え? どうしましたかぁ。スージーさ…」
「男じゃねぇし」
「――」
 今度は佐藤が呆然とした。
「えー? 三十代男でしょ?」
「二十代女です」
「見えなーい」
 佐藤が言うのと同時にデスサイズが飛んできた。
「ギャアアアアッ」
 なんとかかわしたが、髪が数本切れた。よろよろしながら佐藤が叫ぶ。
「武器を使うなんて卑怯者ですね! スージーさん!」
「よくも……ここまで侮辱されたのは初めてデスヨ…」
 怒りで我を忘れるスージー。そんな二人にカメラマンが寄ってきた。
「あの二人、やるな」
 万里鈴のマネージャー室町が、二人の対戦に見入っていた。
「早く、優勝者を決めて!」
 万里鈴が叫ぶ。
 ――くそっ。おじさんだと思って油断したら…(?)
 佐藤、必死で前に進もうとするが、スージーがデスサイズを振り回して通れない。
「坊ちゃん! どうか力を…」
 佐藤はヤケクソで空に祈った。
「良い! コスプレ大会に相応しい執事同士の戦いだ!」
 カメラマンが楽しそうにそんな姿をとらえる。

 ――執事のばか

 もし、何も手に入れることが出来なかったら、そんなことを言われるんですね。
 
 執事、死んじゃえ!!

 佐藤の脳裏に、羽純の泣き顔が浮かんだ。

「ここで…負けられないんです」
「え……?」
 佐藤はスージーにまっすぐ突進した。
「負けられないんですよ!」
「ひぃっ」
 デスサイズが佐藤の右腕を切る。血しぶきが飛んだ。
「はあぁぁぁぁぁっ!」
 足元にあった緑色の物体を踏むと、佐藤はトランポリンのように高く高く飛び上がる――。まるでマンガのキャラクターのように。
 スージーはただ呆気に取られてそれを見ていた。空中で一回転し、ゴールゲート手前で着地する。
「しまっ」
 もう遅かった。佐藤は両手を上げて白いテープを切った。

「ゴォォォォォール!!」

 実況していた司会者が叫ぶと、待っていた観客から拍手が湧き起こる。
「負け…た…」
 スージーが、ふらりとゴールゲートをくぐった。そしてバタンと倒れこむ。
「やった! 坊ちゃんやりましたよぉぉぉー!」
 佐藤はガッツポーズをした。嬉しい! 勝ったぁ!
「で、あなたゼッケン何番?」
「――はい?」
 司会者に聞かれる。
「ゼッケンってなんですか?」
「いやあなたね、エントリーしてないんですよ。ちゃんと受付しましたか?」
 真顔で聞かれる佐藤。
「受け付け? してない…」
「はい失格ぅぅー!」
 司会者に冷たく宣言され、スージーが繰上げ優勝になった……。
「のおぉぉぉぉぉー!!」

 **

「わしのがんばりは無駄に終わったか…」
 モリゾーが唸った。

 **

「それではマリリン賞を発表します」
 マラソンが終了し、司会者が段上に上がった。下にはコスプレランナー達が自分こそが選ばれると、手を組んでいた。そこには佐藤の姿もあったが、望み薄し。
「一番輝いていたコスプレランナーは、トトロさんでーす!」
「…………」
 ダメだった…。
 佐藤はエントリーしていないので、対象外だったのだ。がっくりしながら会場をあとにする佐藤。会場を出たあたりで声をかけられた。それは万里鈴のマネージャー、室町だった。
「あなた、芸能人ではないですよね? どこかで見たような」
「いいえ。ただの佐藤です」
 しょんぼりしながら、室町を目を合わせぬ佐藤。
「さっきは残念でしたね。でもあなたの戦いはすごかったですよ」
「そんな慰めいりませんよ~だ!」
 べーをする佐藤に、室町は後退りした。
「本当に、輝いてましたよ?」
「お世辞より、万里鈴さんのフィギュアが欲しいですよー」
「え? 万里鈴ファンですか」
「ファンって言うか、サインとかグッズとか欲しいんですよ! プレミアの!」
「だったら、ちょっとここで待ってて下さい」
 室町、相当佐藤を気に入ったのか、走っていなくなったかと思うとアノ人を連れてきた。
「ま、万里鈴…」
 超美麗なオーラをまとった女性。万里鈴だった。
 会場の仕事が終わったあとだった。
「万里鈴さん! 本物ですか!」
 感極まって涙する佐藤。万里鈴はニコリと微笑む。
「ええ。あなた、執事姿のコスプレ素敵だったわ」
「はいっ!」
 素敵な姿であると、佐藤は即認めた。そして、
「万里鈴さん。お願いがあります…っ」

 **

「やーっと帰って来たってよ」
 明澄が羽純の部屋に来て告げると、羽純は少しだけびくりとした。
(執事…帰ってきた?)
「僕は許さないぞ」
 すぐに机に向き直る。
(でも執事、大変だっただろうな。フィギュアがレプリカだって気がついて、僕のこと怒ってるかも)
「坊ちゃんー!」
 佐藤が部屋に入ってきた。
「フィギュアは?」
 冷たい視線で羽純が聞くと、佐藤は嬉しそうにカバンから色紙を取り出した。
「坊ちゃん! そんなモノよりすごいものをゲットしました! これ!」
 佐藤の手には万里鈴のサインがあった。口紅のキスマーク付き。
「万里鈴さんが今まで口紅でサインをしたことはないそうです。だから、これは超貴重ですよ!」
「執事…」
 ぱぁぁぁっっと目が輝く羽純。見たこともない色紙だ。筆跡は万里鈴に間違いない!
「執事すごい。どうやってこれ…」
「ふふ。坊ちゃんに差し上げますよ」
「ありがと! 執事!」
 羽純は嬉しくてたまらなかった。しかし、よく見ると右上に…。
「さ と う ひ ろ し、様へ…?」
「はい☆ コスプレマラソンに極秘に来ていた万里鈴さんに、ワタクシ大変気に入られて…握手もしてもらったんですよぉ。いいでしょ」 
 と、手を羽純に見せびらかしてくる。羽純はぷるぷると震え出した。
「ん? 坊ちゃん?」
「よ、よくも…僕の万里鈴ちゃんに…ッ」
 キッと佐藤を睨み、羽純は吠えた。
「ふざけんなッ!」
「え~?」


 二人が仲直りできるのは、まだ遠い☆

 
 完


   

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。