お屋敷ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit
   

婚約者は誰?(15)

婚約者は誰?9

 
 ドアから入ってきた瞬間、あたりが光り輝いて見えた。その人は今までの候補者と歩き方から何から違う。
 顔に見覚えがあった。でもその人物の髪は黒ではなくこげ茶色で、艶々だった。黒いコートを着て靴も黒。ポケットに手を突っ込んでいる。黒いサングラスをしていた。
 お見合いに来たとは思えない無作法な態度。 
 しかしそんなことはどうでもよかった。どうでもいいほどに、魅力的であった。
 お見合いなんてどうでもいい。
 繭美の目はハートマークになり、吸い込まれそうになる。
 世界に二人しかいないとさえ思った。
 どこかでカラン、と音がした。
 その音で、現実に戻る。
 そうだ。私は今お見合い中で、後ろには佐藤がいるんだ。
 その人物は、繭美の椅子の真ん前まで来た。そして腰を屈める。
「こんにちは」
「……あぁ、ぁぁ」
 声も同じ。でも、トーンが違う。
「あ、ごめん」
 と言って、その人物はサングラスを外し、胸ポケットにさした。精神を撹乱させる美貌がそこにあった。こちらを見る目が。目力がッ!
「ロイド様?」
 その人物は頷いた。
「いやぁぁーっ」
 ついに繭美は頬に手を当ててもじもじした。顔が真っ赤になっている。
「私、恥ずかしいぃぃーいやーんっっ」
 繭美、完全にただの恋する乙女と化していた。もしくは大好きな芸能人の前で混乱するファン。
 ロイドとは、今現在人気のミルクアンクエルのボーカルである。佐藤と顔が激似で、繭美はすっかりファンとなっていた。
 いったいぜんたいどうしてなぜロイド様がロイド様がここにー!
 繭美の動揺など気にもせずロイドはポケットに手を突っ込んだまま、天井を見上げる。
「ふぅん。西園寺家ってこういうお屋敷なんだ。入るのは二回目だけど」
 入るのが二回目!? どういうことどういうこと。ってゆーか佐藤はどこッ! ええいあんなやつどうでもいい! とにかく…ロイド様に言いたい。
「ロイド様!」
 繭美は聞きたいことのすべてをスルーして、一枚の書類を取り出した。
「ここにサインをお願いしますぅー」
 ロイドはその紙を手に取り、予想しなかったように目をしばしばさせた。
「婚姻届?」
「私はサイン済みです…」
 ポッと顔を赤くする繭美。ここで書かずにいつ書く婚姻届! 目の前には理想の男性がいるのだから!
 するとロイドは紙を綺麗に畳んで、
「とりあえず結婚できる年齢になって」
 と指に挟んでひらひらさせた。
 いやあああああああああああああああ――ロイドさまーかっこいいー断わり方もすてきー☆
 繭美はロイドパワーによりオカシクされた。
「ロイド様もお見合いで呼ばれたんですか?」
「いや……」
 じゃあなぜここに?
「ある人に会いに」
「ある人……」
 まさか……。
「佐藤ですか?」
 ロイドは前髪を邪魔そうにかきあげる。
 その仕草だけで10万払う価値があると繭美は思った。すべての動作がカッコいいのだ。
「何かの間違いでここのお部屋に通されたけど、君を勘違いさせてごめんね」
 ペロッと舌を出すロイド。
「――」
 なんだ。間違って部屋に入って来ただけなんだ。まあロイド様なら大歓迎だけど。
「ロイド様の会いたい人って佐藤なんですか?」
「佐藤? そんな名前なんだね」
 どうして名前を知らないの? 繭美は混乱した。
「その人に会って、一言、言いたくて」
「一言って何を言うんですか?」
「それは本人に」
「佐藤ならここにいますっ!」
 繭美が振り返って言った瞬間、金屏風がバランスを崩し、倒れてきた。
「きゃあああっ」
 叫んだが、繭美の椅子にはぶつからない距離だ。屏風の裏から現れたのは、佐藤ひろしだった。
 なぜか佐藤は月に代わっておしおきよ、のうさぎちゃんの格好をしていた。金髪のお団子かつら。セーラー戦闘服。あのステッキ。そしてなぜか悲しいぐらいオーラを発していた。
 いろんな意味で繭美が白目でいると、隣のロイドが後退りした。
「――――」
 目を見開くロイド。
「……ぁ」
 佐藤は呆然と、自分と同じ顔の人物を見た。
「佐藤なんでそんな格好してんの?」
 繭美は聞いた。
「――私は…お見合い最後のシメに、一撃を…」
 佐藤が振りかざす予定だったステッキをカランと落とす(この音だったのか)
「……」
 信じられないと言うようにロイドは頬を引きつらせる。
「あの……ロイド様?」
 ロイドはただ佐藤の上から下からもう一度上へと目線を動かし、やはり表情を凍らせる。
 やがて、怒ったようにくるりと振り返り、部屋を出て行ってしまった。
 繭美は慌てて佐藤に詰め寄る。
「佐藤! ロイド様とどんな関係なの!」
「え……? どんな関係って聞かれましても」
「あなたに会いに来たのよ! 言いたいことがあって!」
「知りませんよ。そんなのー」
 佐藤は金屏風を直しながら言う。
 ……ロイド様、佐藤に何を言いに来たんだろう?

「お見合い終了です」
 佐原がピーっと笛を鳴らした。

 
 結婚はどうなる?
 つづく


   

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。